『口利き』

テン・テン・ツク・テン・テケ・テン・テン・テケ・ツク・テン ・シャン・テン・の・スッ・テケ・テン・・・ え~、ようこそのお運びでございます。 え~、昔は、『江戸っ子は、宵越しの金は持たねェ』とか 『江戸っ子の産まれ損ない金を貯め』なぞと粋(いき)がっておりましたそうですが・・、 まあ、持ちたくても、稼ぎが少ないので、持てない・・、 ・・というのが本当のところでございます。 文政の頃の大工の手間賃が一日銀4匁2分。 年に300日働いたとして、年収はだいたい銀1貫230匁ぐらい、 今のお金で約200万円ぐらいになります。 支出はってぇと、店賃や生活必需品、衣服代や交際費など ひっくるめて約1貫500匁で約250万円・・。大赤字でございます。 そこで大家に店賃を待ってもらい、生活必需品をツケで買い、女房を質に・・ じゃない・・内職をさせればなんとかなる。 これじゃあ、貯えるなんてことは夢の中の話で・・。 いまの政治屋さんが、『おれは、宵越しの金は持たねェ』・・ ・・なんて言ってたら、誰も周りに集まって来ませんですな。 「おい、あの代議士は年中すっかんぴんだそうだ」 「うっかり近付くと、無心されるかもしれねぇナ・・」 なんて、選挙民からも警戒されたりします・・。 そこで、秘書が資金集めにまい進することになりますようで・・。

 議員   「お前さんは、今日来た秘書かい?      なに? どこへ行っても使いものにならんと言われたから、      ここへ来たァ!?      おいおい、冗談はよしとくれヨ。      だが、世話になったあの大先生の紹介じゃあ、      むげに断る訳にもいかねえしなァ・・。      まあ、仕方が無い。使用期間限定で使ってみるか。      お前さんは、今日から三日間だけウチの秘書だ。      その後のことは、知らねェよ・・。      えっ? 秘書なんて出来るだろうかって?      出来てもできなくてもかまわん。      たった三日だ・・。      お前さん、『口利き』ってェ知ってるかい?      なに、知らねェ? まあ、その面(つら)じゃナ・・。      聞くだけ野暮(やぼ)か・・。      世の中、ついでに生きてるってェ面構(つらがま)えだなァ・・      いいかい、なぜか政治には金がかかるんだ。      これは日本のジョ-シキなンだ。      そこで、秘書の唯一の仕事といゃア、金集めということだ。      それ以外は無い・・。      秘書は、腹黒いやつでないと勤まらん。      おい、どこへ行くんだ?      えっ、腹に墨汁を塗りたくって来たァ?      呆れたやろうだね。      まあ、あまり難しいこと言っても仕方ないか・・      いま、口利きのシナリオを教えてやるから、しっかり覚えナ。      おいおい、話を聞きながら、あくびをしてちゃいけねェ。      口利きとはな、      公共工事に喰らい付いて、談合をもちかけるんだ。      団子じゃねェぞ、ダンゴーだ。政・官・業の談合だ。      そこで、皆で甘い汁を吸うというわけだ。      業界からは、しっかり献金させるんだ。      出し渋ったら、脅(おど)してもええ。      このあたりが腕の見せ処(どころ)だな・・。      入った金は、ワシがいろいろとうまく使う。      脱税してでも裏金を増やせ。      なぁに、検挙されても2~3年喰らうだけだ。      我が国の司法は、犯罪者には甘いんだ。      被害者には冷たいけどな・・。      まあ、あまり深く考えなくてもええ。      えっ? ワシにもしわ寄せが来るかって?      どうってことはない。ちょいと離党すればええ。      それでだめなら、議員辞職だ。      その後で、禊(みそぎ)をすりゃあいいんだ。      えっ? 『みそぎ』ってなんだって?      『みそぎ』ってのは、次の選挙で当選することだ。      そうすりゃあ、それまでの罪状が      きれいサッパリ消えるってぇシステムだ。      『議員ロンダリング』とも云う。      それでまた、復党できる。うまくできてるだろう。      どうだ。これがシナリオだ。      お前さんは関西の出身だってね。      こんど大阪の方で大きな公共工事があるそうだ。      明日から出張して、『口利き』で金集めするんだ。      では行っといで!」 

秘書   「なんやら、べらべらとようしゃべりまくる先生やなぁ。      口利きで金集めてこいなんて、よう簡単に言いまンなぁ。      そない簡単に金集まるンかいな・・?      公共工事にダンゴに、センカンギュ-に      甘い汁に脅しと言うたな・・      えらくごたごた並べたもんや、ほんまに・・。      腹に墨汁塗ったさかい、乾いたらゴワゴワしてかなんな・・。      ああ、大阪に着いたワ。      どこぞで、公共工事やってへんかいな。      あ、あったあった。アスファルトの鋪装工事やな。      あ~、もおし~。ダンゴやらへんかァ~」 

工事人 「なんや~? 団子をご馳走してくれるんかいな?」 

秘書  「団子やあらへん。ダンゴや~」 

工事人 「なんや、よう分らんな?      いま忙しいよって、あっち行きなはれ~」 

秘書  「センカンキュ-のダンゴやでぇ~」 

工事人 「なんや、九官鳥のことかいな・・?      鳥は、間に合ってまっせぇ~」 

秘書  「なにが鳥やねん・・? 甘い汁吸わんかァ~」 

工事人 「なんや、こんどは善哉(ぜんざい)売る気かいな?      いま昼飯食うたばかりやぁ~」 秘書  「なにが昼飯や・・?      金出さんかァ~」 

工事人 「こんどは強盗かいな?      金はあらへんでぇ~」 秘書  「アカンなあ・・? ほな、脅(おど)したろ。      やい、こらァ~。金出さんと痛い目にあうどォ~」 

工事人 「おい、誰か110番した方がよろしでぇ・・」 

秘書  「ワテは腹黒の秘書やでぇ~。      捕まっても2~3年で出て来れるどォ~。      ワテの先生かて、『議員ドンドンリング』やでぇ~」 

工事人 「アカン。あのオッサン気が触れてまんね。      早よ110番しいやぁ~。      あ、パトカー来た来た・・。      あ、捕まった。      オッサン、とうぶん出て来るなやぁ~」 

秘書  「やったァ! これでシナリオ通りや」 


               

                 お後がよろしいようで・・ 

ポンコツ落語

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